第3章 頼れるのはまず自分
このコンテンツは架空の人物・場所を想定し、LAST GEAR監修のもと、震災・災害・事故等の非常時における「日常からの対策」を提案する物語です。
「ねー パパしっかりしてよー こんな荷物くらい運べないの?私はもう腕が痛いからあとはあなたお願いね。」
『えー!!全部俺かよー、少しは手伝えよ、俺が死んだりいなくなったりしたらどーすんだよ〜』
「ダメよーあなたは私たちより長生きしないとー」
『こんな酷使されていたら早死にするよ』
なぜか主人を探す闇の中、心もとないスマートフォンの灯りの中で、引越しの時の会話が頭に流れてきた。
しっかりしないと。私が一人でもしっかり たこうを守らないとと再度自分に言い聞かせた。
あんな風な言い方ばかりして、役立たず!なんて半分冗談で責めてしまった自分を悔いたと同時に、主人の頼もしさをこんな時にすごく理解できた。
ゴーーーーーーーーーォーーーン ドスン!
とまた大きく揺れた。
「早く、こちらに逃げるんだ!」と誰かが叫ぶ。
私とたこうは、その声を聞いて駆け出した集団の波に飲み込まれて、その行方の方向の検討もコントロールもできずに、ただただその一群の流れに従うしかなった。
たこうの手をさらに強く握って、自分に再度言い聞かせる。
「自分がしっかりしないと」
思い切って一群の方向に逆らい、何度も一団の流れから逃れようとしたがなかなか叶わず、どれくらい経ったのかは実際にはわからないが、一団の数が減り始めた時を狙いやっと逃れ、座れそうなとこを探して一息ついた。
節約のため切っていたスマートフォンの灯りを再起動して周りの様子を伺い、息子のたこうの様子を伺った。
ひとまずたこうには大きな怪我はなさそうだ、ただしひどく疲れて憔悴し切った顔で、ただ心配そうに周りを眺めていた。
必死さが少し緩んだのか、足に痛みを感じ灯りを差し込めた。

お出かけの時のお気に入りのパンプスのヒールはすでに外れて、おまけに足首に巻きつけてデザインアクセントにもなっていた皮の長めのストラップが切れていた。
このままではすぐに脱げてしまうので、うまく結ぶようにして足首に靴を固定した。
すでにヒールも折れて、足元をかなりぶつけたのだろう。両足が傷だらけになっていた。
お気に入りの靴が壊れたことよりせめてもっと歩きやすい靴を履いてなかった自分を多少恨んだ。
LASTGEAR は かなえさんに普段使いもできながら強靭なつくりの靴をオススメします。
5.11tactical
商品名「WOMEN'S 5.11 RECON® TRAINER」

暗闇のがれきの中を歩くには、パンプスではあまりに不安です。
「WOMEN'S 5.11 RECON® TRAINER」は、トレーニングやランニングに適したスニーカーです。
高いクッション性能は長時間の歩行に適していますし、普段の服装に取り入れやすいデザインです。
震災の規模も把握できていない状況下においてかなえさんは、これからどれほどの時間をパンプスで過ごす事になるのでしょうか。
ヒールも折れ、ただでさえ歩行の困難な履物に長時間の歩行はあまりにも不向きです。
ショッピングカートは現在準備中です。
バンドエイドのようなものがないかと自分のハンドバック中を灯りを手がかりに探ってみる。
財布、化粧品少々、ミントキャンディー一個、キーホルダー
役に立ちそうなものはそこには何もなかった。
『かなえ!たこう!』
大きな揺れと同時に、人々はあちらこちらに霧散し始めたように感じた。
ほぼスマートフォンらしきもののライトの中で、時々すごく明るいライトを使っている人もいるようだ。

(備えが良く、持ち歩いているのか?もしくは警備員とか?)
いずれもそれらに映り込む断片的な視界で、精一杯状況をつかもうと必死に情景を眺めていると、その強力なライトが一瞬照らした先に、かなえとたこうらしき姿を捉えた。
『かなえ!!俺だ!』
と叫ぶが、振り向かない。自分はその姿を見失わないように、ただ必死にそちらの方向に駆け出した。
ただし怪我した足の痛みと、さらに足元に転がる瓦礫のようなものの何かがその足先を阻み、なかなか進めずにいた。
何度か他人の照らすライトの中で、その姿を発見した。

家族の姿を確認してなぜか力がみなぎったのか、痛みを超えてすぐ先の距離に近づいた。
『かなえ!!』
必死に歩を進め 妻の肩に手を当てようとしたとき
「あなた、こっちであっているの?」と妻が隣の男性に話しかけた。
??!!
男性がライトでその顔を照らすと、妻ではなく全然別人であることがわかった。
それも親子4人組で、息子と思っていたのはその家族の娘さんであった。
暗い中だったからか、冷静さを失って希望が幻想を作り出したのか。
いずれにしろ大きく落胆するとともになぜか身体の力が抜け、その周辺で座り込んでしまった。
足の痛みが脈のようにズキズキとリズミカルに襲った。
なぜか 生きている と感じた。